「サラエヴォのゴドー」
ボスニア内戦――戦火のサラエヴォ。
通りを行く市民を標的にした狙撃手たちの銃声が鳴り響く中、地元の役者たちによる『ゴドーを待ちながら』の幕が上がろうとしていた。
びっこを引いた役者ゴゴーは相方のディディーと忙しく装置を組んでいた。
ゴゴーは何故かイライラして怒鳴り散らしてばかりいる。ディディーもどこか浮かぬ風だ。
とゴゴーを訪ねて一人の女性――黒い髪、やせて、太って、美しい人――マリマがやって来る。
がゴゴーは激しく拒絶し会おうとしない――
廃屋と化した劇場で十二本のろうそくの明かりを頼りに行われた『ゴドーを待ちながら』の上演は、包囲され閉じ込められたサラエヴォの観客たちの非常な感動を呼んだという。感動はサラエヴォの新たな伝説となり世界に広がった。
『サラエヴォのゴドー』は戦火の中での芝居の上演という事実を改めてフィクション化することで、戦争と演劇、絶望の中に生きる苦悩を正面から描いた作品である。
役者は武器を手にするもんじゃない。役者は台詞だけ持ってりゃいいんだ……。
第18回青年劇場創作戯曲賞受賞作品。広島友好の代表作のひとつ。
男2・女2。あるいは男3・女1。90分。
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