フォー・ウィメン〔Four Women〕〜宇部100年物語〜 第2幕

(第1幕からの続き)


   2幕のオープニングの音楽。幕があがる。

   暗闇の中、悲痛とも言えるシュプレヒコールの声がこだまする。

(声)「閉山やめろー!」「首切り反対ー!」「命を守れー!」「暮らしを守れー!」

   デモ隊が出てくる。腕を組み、ジグザグデモ。ハチマキ姿の者も。赤旗や組合旗がひるがえる。会社の前を。街頭を。炭坑住宅の中を。

デモ「閉山やめろ!」「首切り反対!」「命を守れ!」「暮らしを守れ!」……

   舞台の両端で、上野たちが花壇に花を植えている。舞台を花でいっぱいに。デモ隊に「がんばって!」などなど声援を送る。

   高安社長が出てきて、

高安 (拡声器を手にデモ隊に)諸君! 閉山は致し方ないんだ。わしらも苦渋の決断なんじゃ、わかってくれ!

良次 (怒りと涙)社長! 宇部鉱業所は=沖ノ山は、宇部忠産の大元(おおもと)じゃなぁか。絶対にスクラップ(閉山)はさせちゃならん!

みんな (口々に…「そうだ!」「閉山やめろ!」「撤回しろ!」などなど)

高安 山を愛する気持ちはきみらと同じだ! これも時代の流れなんだ。エネルギー革命というとてつもない大きな波に押し流されて――早く切り替えんにゃ、のっぴきならん事態になる、会社が持たんことなる。そうなったら、退職金どころじゃなくなるんだぞ!

   デモ隊。良次と労働組合幹部・大井と田中が話し合う。

大井 上野さん、残念じゃが……閉山はもう仕方ない。あきらめよう。

良次 クソぉ、わしらの山がのうなるんか。

田中 宇部炭田300年の歴史が、それこそスクラップじゃ。

大井 そんな感傷的なことは後回しじゃ! 方針転換。退職の条件闘争じゃ!

田中 退職手当の増額。炭鉱住宅の1年間の立ち退き猶予。

大井 引っ越し費用も。新しい就職先の斡旋も。

田中 まきや炭の配給。風呂場も使わしてもらおう。

良次 クソぉ……!

大井 (同じ無念の思いをかみしめながら良次の肩に手を置く)

良次 ……よしっ、わかった! わしはまだまだ闘うど! 最後の最後まで!

大井・田中 おうっ!

デモ (ふたたびデモ行進)会社は炭鉱夫を幸せにしろー! 家族を見捨てるなー! 「命を守れ!」「暮らしを守れ!」「命を守れ!」「暮らしを守れ!」……オーーッ!

   家族や同僚、支援者たちも声援を送る。「がんばります!」「応援お願いします!」などなど客席に訴えかけながら、デモ隊は去る。田中がひとり、みんなから遅れる。行く末の困難を思い、ふと足が止まる。と、田中の幼い愛娘りさ子がやってくる。

りさ子 おとうさ~~ん!

田中 ん? りさ子どうした?

りさ子 おとうさん、がんばって。(と何かを渡す)

田中 アメ玉……! (涙がにじむ)うん、うん。(りさ子を抱き上げて)おとうさんと、大和(だいわ…宇部市民憩いの百貨店)でお子様ランチ、食ってくか?

りさ子 おかあさんが、おうちで、まっちょぅよ(待ってるよ)!

田中 (涙がにじんできて)うん、うん……! おとうさん、がんばるけえの!

   田中、りさ子を抱いて、微笑み、去る。

   と、花壇に怪しい人影が。花を抜き、花壇を踏みにじり、人目を避けるようにして隠れる。

   藤川、気づいて、

藤川 時江さん。花壇が! 花が!

上野 まあ! ひどい! だれがこんなことを。市長! 市長!

星入市長 (やってきて)どうしました? あ、こりゃひどい。

   舞台の一方で。陰口。

人  花を植える? 何をのんきな!

人  花で腹がいっぱいになるんかねえ。

人  市長はよっぽど文化がお好きらしい。

人  金が儲かるんじゃけえ、少々町が汚のうても我慢せんにゃ。(下卑た笑い)ヒヒヒ。

藤川 時江さん……

上野 (怒りとさみしさをぐっと飲みこんで)言いたい人には言わせておきましょう。さ、市長も手伝って。(荒れた花壇を直し、黙々と花を植えだす)

藤川 時江さん。……(上野の姿を見て、自分もまた植える)

星入 よしっ。(植える)

   次第に花を植える人たちが増えてくる。みんな笑顔で時に語らい合いながら花を植える。

   学校のチャイムの音。杉岡が出てきて、生徒たちに平和授業をする。観客を生徒に見立てて。

杉岡 きょうの授業はとっても大事なお話をします。(小冊子を示して)「日本国憲法」。みんなは憲法って何か知っちょる? ん。ん。そう、日本でいちばん大切な法律ね。この国の大元の形を定めちょるの。国民主権。基本的人権の尊重。平和主義。大切なのはね、この憲法の主役が、みんなじゃっていうこと。わたしら、国民ひとりひとり。そう、みんな! それでね、この憲法がほかの法律と違うところ、なんじゃと思う? 【……ほかの法律は、国が、わたしらに、これをしちゃいけん、あれをしちゃいけん、って定めたものなんじゃけどね、】憲法はね、わたしら国民が、国に、日本国政府に、これをしちゃいけん、あれをしちゃいけん、って定めたものなそ。そのいちばんが、絶対に戦争はしちゃいけんよってことなそ。これは、日本人の――いんや、戦争でひどい目におうた世界の人たちみんなの願いなそ、祈りなそ。その祈りがね、この日本国憲法には書きこまれちょるの。

   杉岡の話の間に、上野がやおら陰口の人々に近づいていって――

人  な、何よ。

上野 (花を一輪差し出す、あの時の花の少女のように)どうぞ。あなたも。

   ――短い間。

人  (花を受け取り…植えてみる)……あたしはこういうのは……なんだかちょっと……偽善ぽくって――あら、あれね……(植えた花を見、花畑を見渡して)ふふっ、気持ちええ!

上野 うふふ!

   上野の笑いがみんなに広がる。さわやかな風のような笑い声。

   上野、陰口の人々にさらに花を手渡す。みんなは笑顔で花を植える。その姿に重なって……杉岡が日本国憲法第9条をそらんじる。

杉岡「日本国憲法。第9条。戦争の放棄。日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する――」

   (前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない)

   杉岡の朗唱が終わるとき、上野たちが花を持ち、植える姿が、はからずも象徴的な平和のシルエットに見える。みんなの笑い声が宇部の空にこだまする。

   その中のひとりの少女が、広島に花を手渡してくれる。広島は花の香りを嗅ぎ、少女と微笑みかわし、花を胸のポケットへ。

広島 さて――、この頃、宇部新川の駅前には噴水のある池がありまして、その中央に湯浴みする女の彫刻が置いてありました。ファルコネという作家の、まぁ、安い模造品です。しかし、行き交う人の、特におじさんたちの、ふふ、癒しとなっておりました。

   役者の一人が「ゆあみする女」のポーズ。裸像。見方によってはちょっと艶(なま)めかしい。通勤途中のサラリーマン・大倉。

大倉 (鑑賞している。鼻の下が伸びて)むふ。むふふ……。

広島 (並んで、鑑賞して)むふふふ……あぁっ――!

   すると、長靴を履いた市の職員が二人出てきて、噴水池に入り、「ゆあみする女」を勝手に撤去する。「せーの!」。「ゆあみする女」の役者を両脇から抱えて運び去る。

大倉 おいおい、勝手にどけるなよ。せっかく毎日、楽しみにしちょるのに。

広島 市民の意見を聞け! (上野に助けを求めて)上野さん……

   上野と星入市長。

上野 市長! これはどういうことですか。市民から苦情が届いてますよ。市が勝手に撤去したって。

星入 ん〜、みなさんの花いっぱい運動の募金の残りを、市に寄付していただいて、それを元に、新川駅前に彫刻を設置したわけでありまして……

上野 それはわかってます。その彫刻をどうしたんですか。

星入 ありゃ安いレプリカでしてな。このたび、東京の著名な芸術家の先生から、新たに彫刻を寄贈していただけることになり、それを新川の噴水に……

大倉 (ゆあみする女のポーズをほんのちょっぴり取りながら)で、前の彫刻さんは……?

星入 (舞台袖奥にいるはずの職員に向かって)きみ、あれ、どこへやったかな……ああ、ええと、神原公園に確か――

上野 (怒って)たがが彫刻と思ってるから、そんな勝手ができるんです!

大倉・広島 そうだそうだ!

上野 彫刻にも命があるんです。置いたらそこが生きる場所で、呼吸をしてるんです。

大倉・広島 そうだそうだ!

上野 ご覧なさい、市長。市民に愛されている彫刻です。そこのところを市長も考えてくださらなければ。

星入 う〜ん、これは反省です。彫刻にも命がある……か。なるほど。まいった!

上野 町に彫刻を置きたいのなら、置く方法もあるでしょうに……募金の残金で手近に売っていた物を買うから、場所を変えるのも手軽にやってしまうんです。たかが彫刻と思ってるから――

星入 (上野の迫力に圧されて)わかった、わかりました! 上野さん、あなた、彫刻を活かす道を市民と一緒に考えてくれませんか。

上野 彫刻を活かす……? 市民と一緒に……? それはええ考えですけど。じゃけどわたしは彫刻の専門家でもありませんし……

   ――短い間。

大倉 あの……町にもっと彫刻を飾ってはどうです? 宇部じゅうに。疲れたサラリーマンの癒しになるような「芸術的な」ものを……えへへへ。

上野 (はっとなり、大倉をにらむ)あっ!

大倉 や、僕は、その。――ごめんなさい。

上野 そうです! もっと町に彫刻を増やしましょう。立派な彫刻を宇部に。芸術作品として美術史に残るような作品を宇部に持ちこんで、町を飾ることを考えようじゃありませんか。ね、市長!

星入 それはええ考えですな。

上野 その手始めに……そう、まず彫刻展をやりましょう。

大倉・広島 彫刻展を?! この宇部で?! できますかねえ。

上野 できるわよ! 花いっぱい運動もみんなでやってこれたんですもの。できるわよ。

大倉・広島 (半信半疑)はぁ……

上野 といっても、なんの足がかりも。こっちはまったくの素人だし。どっか東京の専門家に相談しようにも……

星入 ん! 打ってつけの人材がおる。

上野 だれです?

星入 灯台下暗し。宇部図書館長の岩崎君。東京大学の出身で、確か美学専攻じゃ。彼なら何か知恵が出るはず。(呼びかけて)岩崎君! カクカクシカジカ……と、こういうわけなんじゃが、ひとつ協力してくれんか。

   岩崎図書館長、出てくる。

岩崎 (目を輝かせて)市長! 東大の恩師で、美術評論家の、土方定一(ひじかたていいち)先生に彫刻展の相談をしてみましょう。でも一つ大問題が……

上野 (身を乗り出して岩崎に近づいて)大問題? なんです?

岩崎 宇部には――ない。

星入 (身を乗り出して近づいて)何が、ない?

岩崎 ないんです、美術館が! 彫刻を飾る場所が!

みんな ああ……! 

   ――落胆の間。

星入 ……いや、待てよ。はっはは、あるじゃないか、宇部には、でっかい美術館が! ね、上野さん。

上野 え?

星入 でっかい自然の美術館が。

上野 ああっ!

大倉 なになに? どこどこ?

上野 常盤公園よ!

大倉・広島 ああ……っ!

星入 岩崎君、きみを常盤公園の野外美術館長に任命する。

岩崎 はい!

上野 でも市長、肝心のものは? 先立つものがなければ。

星入 早速、市議会にはかってみましょう!

上野 大丈夫でしょうか、市民の理解は……?

星入 「文化の香り豊かな町づくり」――これがわしの公約です!

   大倉と広島は飛び上がって喜ぶ。「ヤッホ~ぉっ!」。大倉、スキップで去っていく。

広島 こうして、常磐公園での野外彫刻展が動き出します。ところが、その時はまだ、彫刻を現地で制作するなんてアイディアもなく……

岩崎 市長、また一つ大問題が……

星入 またきみの「大問題」かね?

岩崎 東京の名だたる芸術家の先生方に、彫刻の制作を引き受けてはいただいたんですが……その彫刻をどうやって宇部まで運んだらいいものか?

星入 お金の問題かね?

岩崎 それもありますが、輸送手段です。どうやって安全にスムーズに彫刻を運ぶか。

星入 トラックは……?

岩崎 東京からですか?! それに途中で壊れてしまっては……

星入 列車は……?

岩崎 それも検討したんですが、数もありますし、やはり安全性に問題が……

上野 わたしに、ええ考えがあります。

岩崎 え、どうされるんです?

上野 宇部方式ですよ、市長! この彫刻展をわたしらだけの運動にしてはいけません。市民(上野)も、行政(星入)も、専門家(岩崎)も、力を合わせるんです。そして――企業も。

   上野、宇部忠産へ。社長室。高安社長と社長付きの社員・近藤。

上野 どうか力をお貸しください。

高安 やあ、あなたですか。うちは化学製品は造りますが、彫刻は専門外でしてね、あっはっは。

上野 その化学製品を、セメントを、東京へタンカーで運ばれてますよね。

高安 よくご存知で。石炭から、今はセメントがわが社の主たる事業。

上野 セメントを運んだ帰りのタンカーは……どうされるんです?

高安 どうって……もちろん宇部の港に帰ってきて、また荷を積んで、東京へ――

上野 社長、空っぽですよね。中身?

高安 はぁ?

近藤 何を失礼な! 宇部忠産の社長の頭を空っぽなどと!

高安 何ぃ?!

上野 そんなこと言ってやしません。タンカーの話です。東京にセメントを運んだあとの、帰りのタンカー。中身が空っぽのまま、宇部に帰るんですよね?

高安 ああ、確かに、空っぽ。

上野 その帰りのセメントタンカーに、彫刻を積んではいただけないでしょうか。

近藤 タ、タンカーに?! 彫刻を?!

上野 それができれば、あとは宇部港から常磐公園までは、こちらでなんとか。

高安 ほうほう、考えましたな。

上野 お願いします、社長!

近藤 セメントタンカーに彫刻なんて……んなことできるわけないでしょ!

高安 「ダストイズマネー」……戦後すぐ、公害に悩まされておる時に、石炭を燃やして出る灰を、セメントに混ぜ、固まるのが早くて耐水性に優れた製品を開発して、苦境を乗り越えてきたわが社ですが――カルチャーは、文化は、お金になりますか?

近藤 (鼻で笑って)社長、企業の社会貢献がお金になる時代は、まだずっと先のことかと。

上野 (熱情を込めて)そうです、カルチャーイズカルチャー。文化は文化です。お金にはなりません。じゃけど、カルチャーイズライフ。文化のないところに、人は暮らせません。人の暮らせない町に、経済はありません、企業も成り立ちません。文化には、この町の人の暮らしには、この宇部の企業にも責任があるんです!

   ――短い間。

高安 あっはっは、いやぁこりゃまいった! これこそが、文化を大事にしてきた渡辺祐策の志でしたな。「共存同栄」。ふふふ、あっはっは。(姿勢を正して)あなたの熱意に負けました。タンカーをお貸ししましょう。もちろんお金もいりません。

上野 社長、ありがとうございます! みんなもどんなに喜ぶことか。

近藤 (豹変して)さすが、社長!

高安 きみ、さっそく手配を。(近藤を引き連れて去る)

   上野、高安の去ったほうに深くお辞儀する。

   藤川、出てくる。

藤川 時江さん、教えて。そのパワーはどこから来るの?

上野 思い出してみて……あの戦争中、文化は殺され、灰色の時代じゃったわ。ほら、「若草物語」――好きな本も取り上げられて読めんかった……。悲しくて、悔しくて、さみしくて、息が詰まるようじゃった。あの灰色の空気――それが嫌なだけ。

藤川 時江さん……。

上野 生きる土台が大事なの。環境が。文化が大事なの。

   別の空間で。杉岡とそのクラスの子ども数人。朝丘たち。

朝丘 先生、質問?

杉岡 なぁに?

朝丘 なんでそんなに一生けんめい、けんぽうのお話するそ?

杉岡 それはね、2度と戦争を起こしちゃいけん。あんたらを、先生はもう一人も失いたくないからなそ。(目尻をぬぐう)

朝丘 ふぅん……。先生、お目目かゆいほ?

杉岡 (涙をごまかして)さあ、午後の授業は常磐公園でスケッチよ! 行きましょう!

子どもたち わーいっ!

   子どもたち、常磐公園にやってきてスケッチを始める。(ホリゾントに「蟻の城(彫刻…向井良吉作)」のシルエット)

   別の空間で。タンバリンで踊りを教える友美。息絶え絶えの生徒たち。発表会前の追い込み練習。生徒の星野、山里ほか。

友美 (パッションを込めて)イチ、ニ、サン、シ、ゴ、ロク、シチ、ハチ! ニ、ニ、サン、シ、ゴ、ロク、シチ、ハチ! もっと・高く! 指! 指先! そう、背中で・踊るの! 回って・回って・回って・回って・回って・回って・回って・回って……ポーズを決める!

星野 (息がぜえぜえ)友美先生……ハァハァ……そのパワー……ハァハァ……いったいどこから?!

友美 むかし、焼け野原の宇部に、市民館に帰ってきた時、みんなに誓ったの。この宇部に踊りの花を咲かせると。市民館の台座の上で。

山里 わたし、先生にずっとついていきます!

友美 (笑顔になって)独り身のあたしには、あなたらが子ども代わりよ。さあ、もう1回、いくわよ! イチ、ニ、サン、シ、ゴ、ロク、シチ、ハチ! ニ、ニ、サン、シ……

   舞台の一方で。上野、子どもたちのスケッチを覗いて。

上野 まあ、よく描けてる。うふふ。上手ねぇ。(絵を見て、はっとして)空が……青い! (宇部の空を見渡して)空が青い! 宇部の空が!

杉岡 ほんと! 子どもらの目の病気も、喘息も、この頃はほんと少のうなった。

上野 (思いっきり空気を吸い込み)ああ、ええ気持ち! うふふふ!

   舞台の一方で。藤川とその息子の達雄。達雄は大学進学で上京する。肩にボストンバッグ。小郡駅(今の新山口駅)の新幹線ホーム。ベルの音。

アナウンス「間もなく、上(のぼ)り・こだま7号・大阪行きがまいります。白線の内側まで下がってお待ち下さい」

達雄 母さん、元気でね。

広島 あの日、空襲の日に、市子さんの背中に負ぶわれていた子どもも、この春、大学生に。

藤川 しっかり食べて、勉強して、お友だちつくって。下宿に着いたらすぐ電話寄越しんさいよ。都会の風は冷たいっていうから、しっかり食べて……

達雄 もう聞いたよ、何度も。……さみしくない?

   ――短い間。

藤川 (無理に強がって)平気よ。手紙書くけえね。さ、早く。

達雄 行ってきます!(ボストンバッグを抱え直して去る)

   藤川、いつまでも手を振り、息子の旅立ちを見送り……

藤川 (深くため息。心に穴が……)ああ。わたしは何を、これから……

広島 1967年昭和42年、宇部にひとつ明るいニュースが。インドのカルカッタから10羽の桃色ペリカンが常盤公園にやってきます。ペリカンは……(舞台には)出てきませんね。――そして、来るものあれば去るものがある。ついにその日が……

   沖ノ山の牛岩神社前広場。前夜からの雨の中、宇部忠産宇部鉱業所(旧沖ノ山炭鉱)の閉山式。(昭和42年10月28日)

高安 まったくもって断腸の思いではありますが、開坑以来一〇一五柱(はしら)の殉職者の御霊(みたま)の加護によって、その使命を遂行した由緒ある山ではありますが、ついにこれを閉鎖するもやむなしと相成ったわけであります。今後は、「有限の石炭から無限の工業へ」の経営理念に立脚し、新規事業の開拓をはかり、ますますの発展を期する所存であります……(宇部炭田全体で記録に残っている犠牲者は1199人)

   上野の夫の良次、「閉山反対」のハチマキを静かに取る。こざっぱりとした旅装。足元にトランク。上野、良次のそばへ。

良次 わしは、帰ろうと思う、ふるさとへ。海峡を越えて。時江……ついてきてくれるか?

   ――短い間。

良次 おまえ、泣いちょるんか?

上野 ……夫婦ですもの。ついてくに決まっちょるでしょ。

良次 (思わずふるさとの言葉が)アイゴー! すまん。――すまん。

上野 ――あ、ちょっと待って。

   上野、街路に柳の苗木を植える。そこへ藤川・友美・杉岡たちが集まってくる。

杉岡 行くんかね?

上野 そんな顔せんで。この柳の樹が大きくなる頃に、きっとまた戻ってくるけえ。

友美 海の向こうは遠いよ。

上野 近いよ。近くて遠いのよ、夫のふるさとは。

   藤川、持ってきていた物を上野に差し出す。

上野 ……櫛? これ――あ! お父様の形見の櫛でしょ?

藤川 うん。

上野 もらえないわ。

藤川 あげるんじゃないほ。貸すほ。帰ってくるまで。

上野 市子さん。

藤川 (涙の笑顔)必ず戻ってきて、返してね。

上野 (涙がにじんで)踊ってよ、友美ちゃん。わたしのために。

友美 じゃ、とびっきり陽気なやつを。

杉岡 十八番(おはこ)ね!

友美 でも、音、なしで?

杉岡 (客席奥に向かって)音響さん、音楽お願い!

   友美、♪「おてもやん」を踊る。

   藤川と杉岡、手拍子。涙で見つめる上野。

   友美が踊っている中……やがてトランクを抱えた良次に促され、上野はみんなと別れていく。涙涙の藤川と杉岡。上野はたまらず駆け戻り、藤川と杉岡と抱き合う。そして去っていく。藤川と杉岡、強く手を振る。顔を見合わせ、上野を追って駆け去る。

   出船の汽笛、長く――。

友美 (上野が去ったほうを振り返り、一歩踏み出す)時江……!

   ――と突然の衝撃音! 友美、転倒する。長年の酷使による膝の故障。

   やっと友美が立ち上がろうとするところに、バレエのレッスン着の友美の姪・未来(みく…少女)が来る。

未来 見て見て、友美おばちゃん! 未来、踊れるようになったほ。(何度かターンして、気づいて)……大丈夫、おばちゃん?

友美 シィッ。いい? 黙ってなさい。このことはふたりの秘密よ。

未来 ヒミツ……うん。友美おばちゃん、踊れるようになったよ。アラベスクもできるようになったほ。

   ♪「アニトラの踊り」が静かに流れてくる。踊る未来。一方に石田漠が現れて……その姿はなぜか光に包まれて。

漠  友美……

友美 漠先生。

漠  実は、あの話なんだがね……

友美 漠先生、ごめんなさい――。あたし、ここにいます。ずっとここに。この宇部に。あたしには子どもたちがおる。生徒たちが。(未来の踊る姿を見て)やっとこの土地に、踊りの花が咲こうとしちょるんです!

漠  (笑顔で)きみはここに骨を埋(うず)めるか。

友美 ごめんなさい。

漠  心で踊れよ、友美。心で。そうすれば、どこで踊ろうと同じさ。(踊りながら消える)

友美 漠先生……ごめんなさい。

   生徒の星野と山里、急ぎ来る。

星野 友美先生、電報が! 漠先生が! 漠先生が! 東京から知らせで。

友美 (電報を受け取り)漠先生……!

山里 すぐ東京へ。今からならまだ間に合うかも!

友美 ……何言ってるの。次のクラスよ。次のお教室に行かなくちゃ。

星野 友美先生……! でも――

友美 次はどこ? 下関? 山口? 美祢? 小野田はあしたね。

山里 萩の教室です。

友美 目が回るわね。……何あなた、そんな格好で。(山里の首に自分のネックレスをかけてやる)これ、あげるわ。

山里 まあ! でも、この前も。

友美 いつも奇麗でいなさい。踊り手はみんなに観られちょるのよ。(星野に)あなたには、これを。(自分のはめていた指輪をつけてやる)

星野 友美先生……わたしもいただいてばっかりで。

友美 さ、先に行って支度を、お願い。

星野・山里 はい!

   星野と山里、バレエ走りで華麗に去る。友美、星野たちのあとを少し追おうとして、よろけてこける。未来が手を差し伸べようとするが、さえぎって、

友美 (彼方を見つめて)漠先生……!!

   友美、足を引きずりながらも凛として去る。未来、その友美の毅然とした姿に何かを感じ、ひとつ強くうなずくと、友美を追って去る。

   藤川、友美を離れた所で見ていて。

藤川 (独白)友美はいつもきらびやかで、輝いちょった。オーラがあった。それをうらやましく見ちょる自分がいて……。(ふと空を見上げて)まあ……!

   空を飛んで、ペリカンが一羽やってくる。いや、ペリカンだと思われたのは、空を飛ぶように踊るバレエ教室の生徒よっちゃん。よっちゃんのあとを追いかけ、友だちの純子が駆けてくる。うらやましそう。

   よっちゃんはバレエ教室の子どもたちに合流し、踊りを踊る。花と緑と白鳥の踊り。子どもたちの髪に花飾り。

   純子、立ち止まり、教室の窓から子どもたちが踊る様子をじっと見つめる。

   純子の母の川淵がわが子のあとをさがして追いかけてくる。

川淵 あ、純子、いた! 急に走り出すんじゃから。宇部の空気はまだ亜硫酸ガスがあるとかで……(鼻をひくつかせて)んんっ? そうでもないか……。

   純子、母のそばにやってきて。

純子 お母さん……お願いがあるそ。

川淵 何、純子?

純子 お友だちのよっちゃんね、市民館でね、お姫さまみたいな衣装着て、きれえなきれえなライト浴びて、くるくる白鳥さんみたいに踊っちょったそ。うちもあんなふうに踊りたい……ね? うちんちお金ないから、ダメ?

川淵 (ぎゅっとわが子を抱きしめて)んな、心配せんでも! お母さん、宇部かま(宇部かまぼこ製造会社)でパートで働くから。いっぱいいっぱい踊りんさい! 花のように、白鳥のように、いっぱいいっぱい!

純子 ありがと、お母さん!

   純子たちの様子を見ていたよっちゃんがバレエ教室から出てきて、純子の髪に髪飾りを付けてあげる。そして純子の手を引いてバレエ教室へ。みんなが拍手で出迎える。純子もみんなと一緒に踊る。空を自由に飛びまわるような子どもたちの踊り。

藤川 (母子の姿を見ていた)ああ、ええ気持ち! 花もいっぱい。彫刻もいっぱい。踊りもいっぱい。いっぱい……いっぱい!

   ☆6 『あの日の語り部に』

   ♪NHK朝の連続テレビ小説「おしん」のテーマ音楽。

広島 時代はどんどん進みます。ほかの炭坑町は閉山とともに地盤沈下していきますが、宇部は石炭の町から工業の町へと姿を変え、今日に続いてゆきます。「有限の石炭から無限の工業へ」。石炭産業が隆盛のうちに、化学工業への道を切り拓いた渡辺祐策翁の先見の明ですかね。

   さて、花いっぱい運動の始まった高度成長の時代も、昭和48年のオイルショックで終止符が打たれます。(一本足打法の真似をして)プロ野球巨人軍・王貞治選手の本塁打世界新記録、NHK朝の連続テレビ小説「おしん」の大ブーム。そして昭和天皇の崩御。時代は平成へ。バブル景気の狂乱から、その崩壊。世界では冷戦が終わり、ベルリンの壁が崩壊。ソビエト連邦の消滅。

   1991年平成3年、琴芝に新しい図書館ができます。この頃わたし、結婚して宇部に。自己紹介で劇作家と名乗ると、「げ、劇作家ぁ?! 宇部にそねいな人がおるそかね?!」……とマジでびっくりされたものでした。

   それはさておき、この頃になると宇部の町のそこかしこに、いろんな彫刻が飾られるようになります。そして、ここ、宇部図書館にも。わたしのお気に入り、「冬の子ども」。

   宇部図書館前に立つ、「冬のこども」の彫刻。(佐藤忠良作…役者が演じる)

   その冬のこどもを優しく愛しむように布拭きする老年の婦人がいる。

   藤川(74歳)、本を借りようと、来る。布袋を手に。本好き。

藤川 (彫刻を奇麗にする老婦人の姿を見て)まあ! ……時江さん。これで安心ね。きっと大丈夫。宇部に彫刻は根付きよるわ。

   藤川、冬の子どもに、

藤川 おはよう。(と通り過ぎる)

冬のこども ……。

   杉岡、本をいっぱい抱えて図書館から出てくる。勇み立っている。1995年平成7年……戦後50年の年。

藤川 タキコちゃん! どうしたほ、そんなに本抱えて。本いっぱい運動?

杉岡 ありゃパンプキン、パンプキンじゃった!

藤川 パ、パンプキン……?

杉岡 模擬原爆じゃったそ!

藤川 模擬……原爆?! 落ち着いてわかるように話しんさいよ。

杉岡 アメリカは、宇部で原爆の練習をしちょったのよ!

藤川 まあ! 原爆の練習。

杉岡 あの宇部空襲で……(本を開いて、見て)7月29日にB29が落とした3発の大型爆弾(4・5トン爆弾)は、模擬原爆じゃったそ。長崎の原爆とおんなじ形でおんなじ大きさ。アメリカで公文書が公開されて、そのことがわかったそ。(1992年に米国務省が機密文書公開)

広島 あの空襲から50年が経とうとしていました。

藤川 じゃけどなんで、えーっと、パンプキンなそ?

杉岡 その模擬原爆の、形といい色といい、大けな大けな、まるでカボチャみたいなそ。

藤川 カボチャ……?

杉岡 カボチャは英語でパンプキン!

藤川 (納得)ああ!

杉岡 (本を抱え直して)わたしはなんも知らんかった……あの戦争のことを、宇部の空襲のことを。もっともっと勉強せんにゃじゃ。

藤川 なんで? そんなにせんでも。もう過ぎてしもうたこと――

杉岡 何言いよるんかね! 子どもらに教えるそ。この宇部で何があったかを! この前子どもらに、宇部にも空襲があったんよって話したら……

   舞台の一方に子どもたち(女子中高生)。

子ども 何? 空襲って?

子ども 湾岸……戦争?

子ども フセイン? ブッシュ?

杉岡 宇部よ宇部。宇部は空襲でまる焼けにされたんよ!

子どもたち うっそー! マジで? (悪気のない笑い)きゃはははっ!

杉岡 子どもらは、宇部に空襲があったことを全然知らんそ。(本を見つめて)わたしも知らんことがいっぱいあった。ちゃんと勉強して、子どもらに真実を伝えんと。

藤川 タキコちゃん……あなた偉いわね。感心する。

杉岡 あんたもなんか始めたら。

藤川 もう74よ。この年になって勉強なんて?

杉岡 ご主人が亡くなられて……さみしくない?

藤川 息子家族と一緒じゃから。……わたしゃ主人もおらんことなって、この頃ぁなぁんもする気がせんそ。年に1度の海外旅行だけが楽しみじゃったけど……あとは、好きな本読んでぼーっとしちょればええそ。

杉岡 そんなんじゃボケるわよ。何かやりがいのあること見つけて……

藤川 やりがいなんて、どこ探しても……

杉岡 (ふと)――あれ?

   老婦人が掃除を終えて帰ろうとしている。

藤川 何?

杉岡 (老婦人を見て)あの人――もしかして! (近づいて)あの、失礼ですけど……

老婦人 (足を止めて)何か?

杉岡 あの、恩田国民学校で教師をやっちょった杉岡です。もしかして、徹子さんのお母さんじゃありませんか? ――ほうでしょ! やっぱり!

葛城 杉岡先生! まあ、懐かしい!

杉岡 お元気でしたか? あの時はほんとに……今も徹子さんのこと、思い出すんですよ。

葛城 ほうですか……徹子のことを! (笑顔で)ほら、先生。この子、うちの子に似てません?(冬の子どもを優しく撫でて)この子が、うちの徹子に見えて、仕方なくって……

杉岡 ええ、ええ、ええ! よう似ちょる。(涙ぐみ、葛城の肩をそっと撫でる)……戦争は終わってませんね……。

葛城 (どっと涙があふれ慟哭する)――!!

杉岡 (涙の中に決意を込めて)わたし、みんなに、みんなに伝えますね。徹子さんのことを。あの日のことを……!

   杉岡、葛城の背に手を添え、一緒に歩み去る。

   藤川、まぶしそうに杉岡を見つめる。ふと冬の子どもを見て、図書館へ入っていく。

冬の子ども ……なんだか元気ないな、あのおばあちゃん(藤川のこと)。話しかけてみようかな。

カッタ君 やめときなよ。びっくりするから。

   カッタ君が空を飛んで、図書館へやってきていた。少しやさぐれている。

冬の子ども あたしに意見する? 映画になっていい気になってんじゃない?

広島 カッタ君人気にあやかった映画「カッタ君物語」は、1995年平成7年に完成。

冬の子ども あたしはもうずぅっと前に星入市長のお気に入りで、宇部に来たのよ。あ、タバコ! い〜けないんだぁいけないんだぁ。

カッタ君 (煙草を吸っている)一服させてよ。人気者はつらいんだから。

子どもたち (出てきて)あっ、カッタ君だ!

カッタ君 (煙草を隠して)は〜ぁ~い!

   (「ゴンベさんの赤ちゃん」の節回しで)

   ♪宇部のアイドル カッタ君

    けっこう年を 食ってます

    おまけに女房 子どもあり

    空を飛ぶのも 息がきれ

   ♪宇部のアイドル カッタ君

    週に3日は 幼稚園

    鏡に向かって 求愛の

    踊りおどるも ご愛嬌?!

   カッタ君、客席に愛想を振りまいて、去る。

   舞台の一方、宇部大空襲をまとめた手作りの大きな張り紙と、パンプキンの実物大の絵と解説文を書いた、これまた手作りの張り紙(それらみな、杉岡の夫が作ってくれた)を前に、子どもたちに宇部大空襲のことを語る杉岡。

杉岡 空襲警報ってわかる? アメリカ軍が攻めてくるとサイレン鳴らして、危険だぞって、みんなに知らせるそ。忘れもせん、昭和20年の7月1日の真夜中に、その空襲警報がウーウー鳴ったそ。さあ、大変って、空を見たら、まあ、B29っていうアメリカの爆撃機が何台も何台もやってきて、爆弾をまき散らすそね。「焼夷弾」って聞いたことある? 爆弾の束が四方八方に散らばって落ちてきて、火事を起こすそ。宇部の町は丸焼け。家もお店も工場も。この恩田小学校もぜんっぶ燃えたんよ。それでね、火に飲みこまれてたくさんの人が亡くなったそ。わたしのうちも焼けてね……。【家族3人が、屋根が燃えてくどれてゆくのを見ちょったほ。涙があふれて止まらんかった。】

   (笑って)ふふ、朝になって、急にお腹がすいてね。人ってあねいな時もお腹がすくんじゃね。軒下につるしちょったタマネギが、ええ具合に蒸し焼きになっちょって……(生徒の一人に)そう、食べたそそれを! お父さんとお母さんと焼け跡の瓦の上で……あの甘い味は、今も忘れられん。

   そのお父さんもね、粗末な木小屋ですぐに亡くなってしもうたの。還暦を過ぎたばっかで、今なら死ぬるような病気じゃなかったんじゃけど、家が焼けたショックと栄養失調でね……。

   戦争は憎たらしいよ、恐ろしいよ。この戦争は聖戦じゃ、聖の戦じゃ。大東亜共栄圏のため、天皇陛下のためじゃって、大けな声で政府は言いよったけど――「正しい戦争」なんて、あんなのうそ! 国がわたしら国民をだましちょったそ。……じゃけど、だまされたわたしらも悪い。【わたしらも正しい反省をして、謙虚になって、歴史を学んで、行動することが大事なそ。被害を与えた外国の方々に償いをして、2度と戦争を起こさんようにすることが。】わたしもね、もう2度と子どもらを戦争で失いとうない――そんな祈るような気持ちで、毎日を過ごしてきたそ。……きょうは、聞いてくれてありがとう。

   ☆7 『別れとスタート』

   ♪「だんご3兄弟」の音楽。広島、タンゴの踊りのパフォーマンスで登場。

広島 「だんご50年」の1995年――もとい、「戦後50年」の1995年平成7年は、節目の年であり、大変な年でもありました。阪神淡路大震災があり、地下鉄サリン事件が起きます。……それでも時代は流れてゆく。サッカーワールドカップに岡田ジャパンが初出場。「だんご3兄弟」の大ヒット。そして時代はミレニアムへ。携帯電話が急速に普及し、インターネットの時代へ。2001年には、9・11アメリカ同時多発テロ事件が発生。ワールドトレードセンターのツインタワーに航空機が突っ込む映像は衝撃でした。そして、その報復としてのイラク戦争――もうええ加減、戦争はやめっちゃ!

   ……さぁ、われらが主人公たちは80歳に。またひとつ別れのときが。

   ここは、桜が満開の渡辺翁記念会館。その大ホールの舞台。ちなみにあちらは、渡辺祐策翁の銅像。(銅像を演じている役者が挨拶するように微妙に動く)

   みなさま、どうぞ盛大な拍手をお願いいたします!

「石田友美舞踊生活65周年記念公演」の横断幕。中央台座と6つの石柱のシルエット。

   舞台の中央に飾られた花束の山。割れんばかりの拍手。発表会のカーテンコール。

   バレエ衣装の未来(若い女性)が、車椅子の友美(82歳…2003年平成15年)を連れてくる。

友美 ありがとうございます。みなさまのお陰を持ちまして、舞踊生活65周年記念公演の幕を無事に降ろすことができます。(会場を見渡して)思い起こせば、ここが、この市民館が、あたくしの舞踊生活の出発点でございました。(いたずらっ子のように微笑んで)宇部高等女学校の若く、はち切れんばかりの生徒だったあたくしは、この客席で、石田漠先生の踊りを、文字通り魂が震える思いで見つめていました。その時の感動が、今もこの胸を揺さぶるのです――

   (回想シーン)昔日の石田漠が踊っている。

友美 (車椅子のまま)石田漠……先生! あたしを弟子に、弟子にしてください! お願いします!

漠  僕の弟子に……?

友美 先生の踊りを見ちょったら、うち、うち、いてもたっても。お願いします! どんな厳しい修行でも――

漠  きみは……心で踊れますか?

友美 心で……踊る?

漠  今のその熱い思いを胸に、一生、死ぬまで――心で踊れますか?

友美 はい……! 誓います! 一生、死ぬまで!

漠  今夜10時の夜行で宇部を発ちます。来たければ、ついていらっしゃい。

友美 (傍らの未来に)……心で踊るのよ、未来。いいわね?

未来 はい!

   藤川と杉岡、花束を抱えてくる。

藤川 友美! 発表会の成功、おめでとう。

杉岡 おめでとう。

藤川 あなたはわたしらの憧れじゃったよ。

友美 ありがと。市子も、心躍る何かを見つけてね。

   ♪「アニトラの踊り」のメロディーが遠くあの日の幻のように聞こえてくる。

   石田漠、友美に呼びかける。

漠  友美、よくがんばったね。

友美 (涙)はい……!

漠  偉い偉い。

友美 漠先生……!

漠  さ、踊ろう友美。一緒に。

   歩けないはずの友美が車椅子から立ち上がり、踊る。石田漠と一緒に。「アニトラの踊り」。

天使の少女たちも出てきて、ともに踊る。

一生を全うした充実感で笑顔あふれる友美、踊りながら石田漠と天国へ消えてゆく……

   葬送の鐘の音、長く厳粛に響く――。友美のいた車椅子に桜の花びらが散る。

   生徒たち(天使の少女たち)が友美を(車椅子を)取り囲み、号泣する。

生徒たち 先生……! 友美先生……!

杉岡 100年一緒って約束したじゃない!

未来 (天を見つめて)友美おばちゃん、心で踊るよ。心で。心で……!

   春の風のような優しい音楽が流れる。

藤川 (独白)友美は素晴らしい人生じゃった。宇部に踊りの種を蒔き、花を咲かせ、実らせた。なにより人を育てた。

   ……わたしは何をなしたじゃろう。子どもを育てた。親を看取った。夫に尽くした。それはとっても大事なことで、悔いはない。悔いはないけど……このぽっかり空いた心の穴はなんなそかねえ?

友美の魂 市子! 今からでも遅くない。心躍ることを見つけて!

   少女が一人、藤川のそばへ。冬の子どもに似ている。絵本を抱えてくる。

少女 (笑顔で)ご本、読んで。

藤川 (つられて笑顔になって)本が好きなそ?

少女 うん!

藤川 わたしもよ。小さい頃から本が大好きで。うちに、昔話の上手なおばあちゃんがおってね、いっつもお話をしてくれよったほ。

少女 (大人びた声で)遅すぎることはないよ。

藤川 え?

   市子の祖母・とよの声が聞こえてくる。

とよ(声)♪二羽のことり かわいいことり

      とまっているよ 木のえだに

      一羽は ピッピ 一羽は チッチ

      ピッピ チッチ ピッピ チッチ………

   物思いに耽っている藤川のそばへ、広島が来る。

広島 (自治会長を演じて)藤川さん、回覧です。

藤川 あ。自治会長さん、いつもどうも。

広島 こっちは今月の公報。ま、たいしたことは載ってなぁじゃろうけど……

藤川 うふふ。(何気なく広げて、見て)……

広島 何か変わったことでも載っちょりますか?

藤川 (紙面に何か惹かれて)あっ――ああっ! ここ、宇部高女があった所なほ! これじゃ……これ! 何かの縁じゃ!(公報を持って、おぼつかない足取りながらも心は弾んでスキップで去る)

広島 んん? (自分の公報を覗いてみて)琴芝小学校で……読み聞かせボランティア募集……?  (語りの役に戻って)50の手習いならぬ、80の手習い! 人生いつだって――

冬の子ども 遅すぎることはない。うふふ!

   広島と冬の子ども(絵本の少女)、腕を組んでスキップで去る。

   小学校のチャイムの音。子どもたちが飛び出てくる。元気に遊びまわる。

   校庭の片隅。藤川(80歳)と、藤川の初老の息子・達雄。藤川は手に冊子を入れた布袋。

達雄 母さん、約束してよ。みなさんに迷惑になるようじゃったら、辞めるって。

藤川 初めての日に辞める話なんて――

達雄 年なんじゃけえ! ……約束してくれんにゃ、車で送り迎えせんよ。

藤川 それより、緊張を鎮める魔法でも考えて。

達雄 ……わし、子どもの頃、よう寝る前に本を読んでもらいよった、母さんに。

藤川 ほうじゃったねえ。あんたぁ、厚狭の寝太郎の話が大好きで、なんべん読まされたか、うふふ。

達雄 車で待っちょるよ!(なんだか怒って行ってしまう)

藤川 (息子の背に手を合わせ)……ありがと。

   琴芝小学校の教室。6年生の子どもたちと墨田先生。そばに藤川が緊張して立っている。

墨田 はーい、静かにぃ。座ってぇ。は〜い、1回深呼吸ぅ! ……もう1回ぃ! (藤川に)それではよろしくお願いします。

藤川 (緊張)おはよう。初めまして……ふ、藤川と言います。う、生まれて初めて、読み聞かせをします。どうぞよろしくね。

子どもたち (まだ心を開いていない。返事をしない)……。

藤川 (戸惑いつつ)みんなは、霜降山って知っちょる? (子どもたちの反応を見ながら)知っちょる?……知らん? 昔は霜降山のことを、城山(じょうやま)って呼んでました。(手作りの冊子を手に取ろうとして)そこには昔お城があってね、お殿さまが住んじょったほ。じゃから城の山、じょう(やまって)――(手が震えて冊子を取り落とす)

   藤川、冊子を拾おうとして、また取り落とす。中身の紙が散らばる。

藤川 あらあら。

子どもたち ……。

   緊張からか手が震えてなかなか拾い上げられない。子どもの一人が拾ってあげる。

藤川 ごめんなさいね。ありがと。

子ども (大あくび)あァあ!

子どもたち (思わず笑う)ははははっ!

墨田 シィーッ。集中ぅ~!

子どもたち (集中が途切れ、落ち着きなくざわざわしだす)

藤川 ……。

墨田 静かにぃ。お約束したよ。

   子どもたちのざわつきは一向に収まらない。

墨田 静かにぃ!

時が一瞬止まる――

藤川 ああ、馬鹿じゃった。こんなばあさんに、読み聞かせなんてできるわけが――

   と、藤川の心の中で、祖母・とよの声がする。

とよ(声)♪二羽のことり かわいいことり

      とまっているよ 木のえだに

      一羽は ピッピ 一羽は チッチ………

藤川 うん、ほうじゃ!(みんなに背を向けて何かの用意)

子どもたち ? ? なに? なになに? どうしたそ?

墨田 あの……大丈夫ですか?

藤川 (笑顔で振り向いて)ピピピピピッ! チチチチチッ! 霜降山から小鳥さんが飛んできましたよぅ。(右手の中指に付けた小鳥)ピピピピピッ。(左手の中指に付けた小鳥)チチチチチッ。

子どもたち うわっ、小鳥じゃ。かわいいっ!

藤川 (小鳥の遊戯を始める)

   ♪2羽のことり かわいいことり

    とまっているよ 木のえだに

    1羽は ピッピ 1羽は チッチ

    ピッピ チッチ ピッピ チッチ(小鳥同士が挨拶する)

    とんでけ ピッピ とんでけ チッチ(2羽の小鳥が消える)

    おかえり ピッピ おかえり チッチ(2羽の小鳥が現れる)

    2羽のことり かわいいことり

    とまっているよ 木のえだに

    ピッピ チッチ

    さよなら〜♪(小鳥たちが飛んでゆく)

子どもたち (大拍手!)うわーっ!

   藤川、小鳥の遊戯で子どもたちの心をとらえる。

藤川 (スムーズにお話に入る)「城山の宝くらべ」……むか〜し、むかしがあったんて。長門の国の宇部に、たいそうお金持ちのお殿さまが住んじょりんさったんて。お殿さまは、長門と周防(すおう)と安芸(あき)の三国の御大将で、名を厚東さまっちゅうたんて………

広島 (藤川たちの様子をそっと覗き見ていた)よかったですねえ……。

   ☆8 『本当に今からでも遅くない』

   ♪「世界にひとつだけの花」の音楽。

   読み聞かせがサイレントで進行する。その様子を見せながらの、広島の語り。

広島 さぁ、平成の世を象徴する出来事はなんだったでしょう? バブル崩壊後の平成デフレ不況。失われた20年。そして平成23年3月11日の東日本大震災、原発事故……。

  【日本は、何かといえば「自己責任」の世知辛い世の中。世界はグローバリズムから自国ファーストの時代へ。】

   宇部では、ちょうど大震災のあった年に、鳥インフルエンザのため、常盤公園の白鳥322羽、カモ14羽が殺処分されるという悲しい出来事がありました。

   さて、令和の時代の幕が開きます。常盤公園での野外彫刻展は60年の歴史を迎え、花と緑は、今、宇部の町にあふれています。かつて栄えた中心商店街はシャッター通りになってしまいましたが……それでもわたしたちは、生き生きと、この平凡な毎日を――んん?(ふと藤川の読み聞かせを、怪訝な表情で見つめる)あの緊張の読み聞かせの日から、20年の月日が経っています……

   藤川(100歳になっている)、読み聞かせを続けている。

藤川 ……ある雨のザァーザァー降る日に、お殿さまは、いちばんえらい家来をよんで、「どうじゃ! こんな長い雨降りは、もうあきあきしたぞ。家の外で遊ぶにも遊べんから、あしたは、わしの持っている宝と、おまえの持っている宝をくらべてみようではないか」。いちばんえらい家来はびっくりして、「いやいや、お殿さま、ご冗談を! お殿さまは三国一の御大将、わたしはその家来。宝くらべのしようもございません」。「うるさい、余の命令じゃ! 宝を持ってまいれ!」。一度言い出したら聞かないお殿さまは、いやがる家来に……(とうとう宝くらべを押しつけてしまいました)

   神田校長が急ぎ出てくる。マスクを付けながら。墨田に目配せをする。

神田 藤川さん。お知らせしたはずなんですが……

藤川 え?

墨田 みんな、マスク付けてぇ。離れて座ってぇ。おしゃべりしません。ソーシャルディスタンスぅ!

   墨田先生や子どもたちがマスクを取り出して、付ける。離れて座る。読み聞かせの和やかな雰囲気が壊れる。

ニュース音声「朝のニュースです。新型コロナウィルスが世界的な流行を見せ、日本でも感染者が急速に拡大しています……」

総理大臣「緊急……事態……宣言(しぇんげん)……を……発出……しましゅ!」

神田 ……というわけでして、読み聞かせは当分、取りやめということで。

墨田 どうでしょう……お体が心配ですし……藤川さん、本当によくがんばってこられました。ここらあたりで、その……

神田 学校としましても、もし何かあっては……お年がお年ですし……このご時世、家でのんびり過ごしていただいて……

墨田 (子どもたちに)は〜い、読み聞かせは中止ですぅ。さ、前の人と距離を取って、おしゃべりせずに教室に戻ります。ソーシャルディスタンスぅ!(子どもたちを連れて去る)

   一人取り残される藤川。大きくため息。何やら不穏な心理音――

藤川 (帰ろうとして、場所が認知できなくなる)あれ、玄関は……? あれ、ここはどこ……? あれ? あれれ? (ふと自嘲して)潮時かねえ――?

   友美の魂が現れる。頭に天使の輪っか。

友美の魂 市子! 何落ちこんじょるそ! (冗談めかして)なんならこっち来るぅ?

藤川 友美、わたしやっと、やっと心躍ることを見つけたほ。子どもらの笑顔を見ちょると、そりゃわたし――

友美の魂 だったら悩むことないわよ。

   杉岡(100歳)、来る。本を山のように抱えて。

杉岡 落ちこむ暇があったら、勉強勉強。

上野 市子さぁーん!

   上野(100歳)が駆けつけてくる。簡単な旅装姿。

藤川 時江さん?! あなたも幽霊?!

上野 ちゃんと生きちょるわよ。

藤川 でも、どうして?

上野 市子さん、あなた、宇部日報で記事になっちょったでしょ。それをネットで見たほ、「100歳の朗読ボランティア、子どもたちに読み聞かせ」。

藤川 まあ、ネットで! ほうかね。

上野 今、自分史を書いちょるのよ。宇部におった頃のことを。

杉岡 そりゃええね。だれかが芝居にしてくれるかもよ。

上野 (櫛を取り出して)向こうでね、つらいことがあると、これで髪をとくの。そうすると、不思議にがんばってこれたほ。勇気が出てくるの。(藤川の髪をといてやる)ね!

藤川 (ぐっと込み上げる…櫛を受け取る)――!

杉岡 ほれほれ、こっち来て。見て!

   4人が歩調を合わせ、手を取り合って歩く。上野が植えた柳が大きくなっている。

上野 わあ、この柳! 立派になって。………

   柳を見上げる4人。それぞれの思いが胸に去来する。

上野 あの日、友美に踊ってもらったわね……

杉岡 友美がここにおったら……

友美の魂 いるわよ!(上野と杉岡には見えない・聞こえない)

藤川 うふふ!

上野 (感慨深い)町には彫刻が至る所にあるのね。

杉岡 花も緑も。あれから一人も、教え子を戦争で死なせんじゃった。

友美の魂 踊りの花も咲いたわよ。人っていう花が。

藤川 うん、ほうじゃね……今からでも遅くない!

美雨 おばあちゃん、こっちこっち!

   藤川の曾孫の美雨(みゅう・中学生)が、藤川を椅子に座らせる。

   美雨、スマホを構える。ユーチューブ用の動画を撮る。

美雨 いいよ、おばあちゃん! ゴ、ヨン、サン……(あとは口パクで「ニ、イチ、スタート!」…テレビのディレクターのように合図を送る)

   藤川、スマホを前に手作りの冊子を開く。オシャレな若者向けのキャップを斜めにかぶっている。その様子を友美・上野・杉岡が見守っている。

藤川 は〜い。藤川のおばあちゃんよ。みんな見てくれてますか。市子チャンネルに登録よろしくぅ。登録者が1万人を超えました、サンキュ〜。

   きょうも宇部のお話ですよ。みなさん聞いてくださいね。

   むか~し、といっても100年前のこと、この宇部には炭坑がいっぱいあったのよ。炭坑ってわかる? 土の中から石炭を掘り出すのね。宇部は炭坑で石炭がいっぱい取れたそ。それも海の底から。海底炭坑。石炭がいっぱい取れて、戦争景気でそれが飛ぶように売れて、人が増えて、町が栄えて、宇部は村から、町を飛び越して、いっぺんに市になったほ。そのお祝いに、炭坑からサイレンが鳴って、石炭の積出し船から汽笛が鳴って……

   あの日の汽笛やサイレン、鐘や太鼓が幻のように聞こえてくる……

藤川 みんなが小旗を振って、琴崎の八幡様まで行進して、昼からは仮装行列に、「しゃぎり」っちゅう愉快な踊りをおどって、そりゃあもう大騒ぎじゃったんて。

   その宇部の誕生日に生まれたのが、このわたし、藤川のおばあちゃん。わたしも100歳になりました!

   美雨がスマホの動画を撮りながら優しく歌いだす。

美雨 ♪ハッピーバースデー ツー ユー……

   友美と上野と杉岡がそれに続く。出演者もみんな出てくる。

3人 ♪ハッピーバースデー ツー 「ミー」(微笑み合う)

みんな ハッピーバースデー ディアおばあちゃん…… ディア宇部……

    ハッピーバースデー ツー ユー!♪

   みんなの拍手と歓声! 宇部100年を生きた4人の女性が満面の笑みを浮かべる。

広島 さあ、お芝居もそろそろおしまいにしましょう。101年目に向けて、わたしたちは生きていきます。悩みや苦しみを抱えつつも、毎日を平凡に、一生懸命――それが人生ですからね――毎日を平凡に一生懸命……そう、100年前の宇部の人たちと同じように。

   藤川、小鳥の遊戯をやる。その周りに友美・上野・杉岡。みんなで踊りながら。4人の宇部のおばあちゃん。(美雨がその様子をスマホで撮っている)

藤川   ♪宇部のことり かわいいことり

      とまっているよ 木のえだに

友美・上野 1羽は ピッピ 1羽は チッチ

藤川・杉岡 1羽は ピッピ 1羽は チッチ

4人    ピッピ チッチ ピッピ チッチ

    とんでけ ピッピ とんでけ チッチ

      おかえり ピッピ おかえり チッチ

      宇部のことり かわいいことり

      とまっているよ 木のえだに

      ピッピ チッチ

      さよなら〜♪

   エンディングの音楽が流れる。

   藤川、美雨を優しく呼ぶ。指にはめていた小鳥の人形を美雨にあげる。

   友美と上野と杉岡が、それぞれの曾孫(少女)を呼ぶ。少女たちがみんなのそばに駆け寄り、笑みを交わす。

   美雨が指にはめた小鳥をまるで空を飛んでいるように動かす。「ピピピピピッ! チチチチチッ!」。その様子を見てみんなが微笑み合う。

   4人の女性と、次代をつなぐ4人の少女が、笑顔で語らい合う姿を残しつつ………

                                 ―――幕―――

○お話を伺った方々(深く感謝いたします/作者)

藤本久子さん

杉山ユキコさん

上田耿介さん(上田芳江さんのご子息)

濱本美和さん(石井好美さんの姪御さん)

阪口香奈子さん(石井好美さんのお弟子さん)

○ 引用・参考文献 (深く感謝いたします/作者)

「宇部市史 通史篇 下巻」宇部市史編集委員会

「歴史の宇部 戦前戦後五十年」

      上田芳江/宇部市制五十年記念誌編纂委員会

「緑で公害から町がよみがえるまで 宇部緑化二〇年の記録」

      上田芳江・山崎盛司/カンデラ書館

「香川昌子伝」上田芳江/香川学園藤花会

「宇部大空襲 戦災50年目の真実」宇部市の空襲を記録する会

「こころの里宇部 回想年表 生かされて 生きて」

      綿森一郎編/宇部市明るい社会づくり推進協議会

「炭都百年史話」宇部時報社

「宇部石炭史話 すみをいかしたひとたち」朝日新聞宇部支局編

「宇部で使われた炭鉱のことば」

      長尾美代之輔編著/宇部地方史研究会

「ときわ公園物語」宇部観光コンベンション協会

「太田薫 太田ラッパ鳴りやまず」

      編者塚田義彦・太田正史/労働教育センター

「宇部日報100年小史」堀雅昭/宇部日報社

「やまぐち人国記」讀賣新聞山口支局編著

「山口のむかし話 改訂版」山口県小学校教育研究会国語部会編

「新造節三先生伝」編廣澤道彦/学校法人香川学園

「バレエ漬け」草刈民代/幻冬舎

「周防正行のバレエ入門」周防正行/太田出版

「イラストなぎなた 見る・学ぶ・教える」全日本なぎなた連盟/五月書房

「わが町」ソーントン・ワイルダー/ハヤカワ演劇文庫

写真アルバム「宇部・山陽小野田の昭和」樹林舎

「ふるさとの想い出 写真集 明治・大正・昭和 宇部」

      編著者上田芳江/国書刊行会

「ふるさと宇部」監修國守進/郷土出版社

「炭鉱 戦後50年のあゆみ」炭鉱写真集編集委員会/宇部市

「写真集 昭和40年代初めの宇部」末冨茂樹/私家版

DVD「宇部大空襲 映像3部作」宇部市の空襲を記録する会

石井好美創作舞踊研究所発表会パンフレット・DVDなど

宇部市ホームページ

ときわ公園ホームページ

宇部日報記事

宇部フロンティア大学看護学ジャーナル記事

ウィキペディアなどインターネット情報ほか

フォー・ウィメン〈Four Women〉

      〜宇部100年物語〜

               作・広島友好

○ 登場人物

 藤川市子

 石田友美(若木友美・わかぎともみ)

 上野時江

 杉岡タキコ

 広島友好(劇作家)

(以下、右記5人をのぞいた場面ごとの登場人物

 …重複出演あり)

☆1『100歳の読み聞かせ』

 読み聞かせを聞く子どもたち(琴芝小6年生)

 墨田(担任の先生・男性)

☆2『誕生』

 藤川正子(市子の母)

 とよ(市子の祖母)

 作造(市子の父)

 松山(助産婦)

☆3『100まで友だちで』

 田端(宇部高等女学校の女性教諭)

 石田漠(舞踊家・男性)

 石田カナリア(漠の弟子・女性)

☆ 4『宇部大空襲』

 高井(杉岡の先輩教師・男性)

 憲兵……数名

 敏子(藤川の娘・子ども)

 葛城徹子(杉岡の教え子・国民学校6年生)

 朝子(杉岡の教え子・国民学校6年生)

 葛城(徹子の母)

 作造(藤川の父)

 池信吾(踊りに驚く少年)

 宇部市の人々

☆5『花と彫刻とそして……』

 星入(ほしいり・市長・男性)

 スケッチをする子どもたち

 暴力団員下っ端

 若頭

 組長

 別の組長

別の組の暴力団員

 ほか暴力団員多数(東西二つの勢力)

 暴力団員の真似をする子どもたち

 宇部の女性たち

 花をあげる少女

 お巡りさん

 新聞少年(宇部時報)

 新聞少年(ウベニチ)

 上野良次(時江の夫)

 高安(宇部忠産社長・男性)

 近藤(宇部忠産社員・男性)

 友美の舞踊教室の生徒多数

 池信吾によく似た男の子(友美の教室の生徒)

 晴子(友美の教室の生徒)

 律子(友美の教室の生徒)

 沢島(律子の母)

 下柳(友美の弟子・大人女性)

 石田漠

 閉山反対のデモ隊(炭鉱夫たち)

 大井(労働組合の幹部)

 田中(労働組合の幹部)

 りさ子(田中の娘・幼女)

 陰口の人々(花を踏みにじる)

 ゆあみする女(彫刻)

 大倉(彫刻を鑑賞するサラリーマン・中年男性)

 宇部市職員……2人

 岩崎図書館長(中年男性)

 朝丘(杉岡のクラスの子ども)

 星野(友美の舞踊教室の生徒・女性)

 山里(友美の舞踊教室の生徒・女性)

 駅の構内アナウンス

 達雄(藤川の息子・大学進学)

 未来(みく・友美の姪・少女)

 純子(少女)

 川淵(純子の母)

よっちゃん(舞踊教室生徒・純子の友だち)

☆ 6『あの日の語り部に』

 冬の子ども(彫刻)

 冬の子どもを奇麗にする老婦人(葛城…徹子母)

 宇部空襲を知らない子どもたち(女子中高生)

 カッタ君(桃色ペリカン)

☆7『別れとスタート』

 渡辺祐策の銅像

 未来(友美の姪・大人女性)

 石田漠

 踊る天使たち=舞踊教室の生徒たち

 少女=冬の子ども

 自治会長(広島友好が演じる)

 達雄(藤川の息子・初老)

 6年生の子どもたち

 墨田先生

☆8『本当に今からでも遅くない』

 6年生の子どもたち

 墨田先生

 神田校長(女性)

 ニュース音声

 総理大臣

 美雨(みゅう・藤川の曾孫・女子中学生)

 出演者みんな

 曾孫たち(少女)


広島友好戯曲プラザ

劇作家広島友好のホームページです。 わたしの戯曲を公開しています。 個人でお読みになったり、劇団やグループで読み合わせをしたり、どうぞお楽しみください。 ただし上演には(一般の公演はもちろん、無料公演、高校演劇、ドラマリーディングなども)わたしの許可と上演料が必要です。ご相談に応じます。 連絡先は hiroshimatomoyoshi@yahoo.co.jp です。

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